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PCのクローニングソフトとは?失敗しない選び方や導入手順を解説

企業にとって、複数台のPCに同じ環境を構築する作業は時間がかかる大きな課題です。しかし、PCクローニングソフトを使えば、マスターPCの環境を丸ごとコピーして、他のPCに素早く展開できます。
本記事では、PCクローニングソフトの基礎知識から、失敗しない選び方、導入手順まで解説します。適切なクローニングソフトを選ぶことで、キッティング作業の効率化とコスト削減を実現しましょう。
関連記事:マスターイメージの作成方法は?失敗しないコツと手順をわかりやすく解説
PCクローニングソフトとは
PCクローニングソフトとは、コンピューターのハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)に保存されているオペレーティングシステム(OS)、アプリケーション、設定、データなど、すべての情報を別のドライブに完全に複製するためのソフトウェアです。これにより、新しいPCのセットアップやシステム移行、迅速なバックアップと復元が可能になります。
PCクローニングの定義
PCクローニングとは、文字通り「PCの複製」を意味します。具体的には、あるPCのストレージデバイス(HDDやSSD)の内容を、別のストレージデバイスにビット単位で完全にコピーするプロセスを指します。
これにより、元のPCと全く同じ環境を持つPCを迅速に用意することができます。例えば、企業で大量のPCを展開する際、マスターとなるPCを一台設定し、そのクローンを複数作成することで、一台一台手動で設定する手間を省くことが可能です。
クローニングとイメージングの違い
PCの複製に関連する技術として、クローニングとイメージングがあります。これらは混同されがちですが、目的と方法に違いがあります。
クローニング(Disk Clone)
ストレージデバイスの全内容を、別のストレージデバイスに直接、物理的にコピーする技術です。コピー先のドライブは、コピー元のドライブと全く同じ起動可能な状態になります。通常、クローン元とクローン先のドライブは同時にPCに接続されている必要があります。
イメージング(Disk Imaging)
ストレージデバイスの内容を、圧縮された「イメージファイル」として保存する技術です。このイメージファイルは、外部ストレージやネットワーク上に保存され、必要に応じて元のドライブや別のドライブに展開(リストア)して元の状態を復元します。イメージファイルは単一のファイルとして管理できるため、バックアップやアーカイブに適しています。
クローニングは即座に利用可能な複製を作成するのに適している一方、イメージングは柔軟なバックアップと復元、および長期的なアーカイブに適していると言えます。
企業におけるクローニングソフトの必要性
企業においてPCクローニングソフトは、IT資産管理と運用効率化のために不可欠なツールとなっています。その必要性は多岐にわたります。
キッティング作業の効率化
新規導入や入れ替えで大量のPCを展開する際、一台一台手動でOSインストールやアプリケーション設定を行うのは膨大な時間と労力がかかります。クローニングソフトを使えば、標準環境のマスターPCを作成し、そのイメージを複数のPCに一括展開することで、キッティング作業時間を大幅に削減できます。
システム障害からの迅速な復旧
PCのOSやシステムに深刻な障害が発生した場合でも、事前に作成しておいたクローンやシステムイメージがあれば、迅速に元の正常な状態に復旧させることが可能です。これにより、業務の中断時間を最小限に抑え、事業継続性を確保できます。
IT管理コストの削減
標準化されたPC環境を容易に構築・維持できるため、個別のPC設定に関する問い合わせやトラブルシューティングの頻度が減り、IT管理者の負担とコストを軽減します。
セキュリティとコンプライアンスの強化
全てのPCに同一のセキュリティ設定やソフトウェアを適用できるため、セキュリティポリシーの徹底が容易になります。また、監査対応などコンプライアンスの観点からも、標準化された環境は重要です。
PCクローニングソフトの主な機能
PCクローニングソフトは、単にデータをコピーするだけでなく、システム全体の複製や展開を効率的に行うための多彩な機能を備えています。ここでは、クローニングソフトが提供する主要な機能について解説します。
ディスククローン機能
ディスククローン機能は、PCに搭載されているハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)の内容を、別のドライブに完全に複製する機能です。
OS、アプリケーション、設定、データ、さらには隠しパーティションやブート情報まで、ディスク全体の構造をそのままコピーします。これにより、古いHDDから新しいSSDへの換装や、故障したドライブからの復旧、システムドライブのアップグレードなどを簡単に行うことができます。
パーティションクローン機能
パーティションクローン機能は、ディスク全体ではなく、特定のパーティションのみを選択して複製する機能です。例えば、OSがインストールされているCドライブだけをコピーしたり、データが保存されているDドライブだけを別の場所に移動したりする場合に利用します。必要な部分だけを効率的にコピーできるため、時間やストレージ容量の節約にもつながります。
システムイメージのバックアップ・復元
この機能は、PCのOS、インストールされているアプリケーション、ユーザーデータ、各種設定など、システム全体の状態を一つのファイル(システムイメージファイル)として保存するものです。
このイメージファイルがあれば、万が一システムが起動しなくなったり、深刻なエラーが発生したりした場合でも、作成時の状態にPCを丸ごと復元することができます。定期的なバックアップにより、予期せぬトラブルからの迅速な復旧が可能になります。
異なるハードウェアへの展開機能
多くのPCクローニングソフトは、作成したシステムイメージを、元のPCとは異なるハードウェア構成のPCに展開する機能を持っています。
これは「ユニバーサル復元」や「ハードウェア独立型復元」とも呼ばれ、新しいPCへの移行や、企業内で異なるモデルのPCが混在する場合のキッティング作業において非常に有効です。展開時に必要なドライバーの自動調整などが行われ、異なる環境でもシステムが正常に動作するようにサポートします。
ネットワーク経由での配信機能
企業環境や教育機関などで多数のPCを同時にセットアップする場合に重宝されるのが、ネットワーク経由での配信機能です。作成したシステムイメージをネットワーク上に配置し、PXE(Preboot Execution Environment)ブートなどを利用して、複数のターゲットPCへ一斉に展開することができます。
これにより、一台ずつ手作業でセットアップする手間を大幅に削減し、大規模なPCキッティング作業の効率化と標準化を実現します。
PCクローニングソフトの導入手順
【STEP1】マスターPCの準備
PCクローニングを成功させるための最初のステップは、クローン元となる「マスターPC」を完璧な状態に準備することです。このPCには、OSのインストールはもちろん、業務に必要なアプリケーション、最新のセキュリティパッチ、各種ドライバ、そして企業ポリシーに合わせた設定がすべて完了している必要があります。
不要なソフトウェアやファイルは削除し、動作が安定していることを十分に確認してください。このマスターPCの状態が、展開されるすべてのPCの品質を決定します。
【STEP2】クローニングソフトのインストール
次に、選定したPCクローニングソフトを、マスターPCまたはクローニングを管理するサーバーにインストールします。
ソフトウェアのシステム要件(OS、メモリ、ストレージなど)を確認し、推奨される環境に導入することが重要です。インストール後は、ライセンス認証を済ませ、ソフトウェアが正常に起動し、すべての機能が利用できる状態であることを確認しましょう。
【STEP3】システムイメージの作成
マスターPCの準備とクローニングソフトのインストールが完了したら、いよいよシステムイメージの作成です。クローニングソフトを起動し、マスターPCのOS、アプリケーション、設定、データを含むすべての情報を一つのイメージファイルとして保存します。
この作業中はマスターPCの操作を避け、プロセスが完了するまで待ちます。作成されたイメージファイルが破損していないか、整合性が取れているかを検証する機能があれば、それを利用して確認することをおすすめします。
【STEP4】イメージの保存先の決定
作成したシステムイメージファイルは、安全かつ効率的にアクセスできる場所に保存する必要があります。保存先としては、大容量の外付けHDD、ネットワーク接続ストレージ(NAS)、または企業のファイルサーバーなどが一般的です。
複数のPCにイメージを展開する際には、ネットワーク経由でのアクセス速度が重要となるため、十分な帯域幅とストレージ容量を確保できる場所を選定してください。
【STEP5】ターゲットPCへの展開
保存したシステムイメージファイルを、新しいPC(ターゲットPC)に展開します。展開方法はクローニングソフトや環境によって多岐にわたりますが、USBメモリからのブート、ネットワークブート(PXEブート)、または管理コンソールからのプッシュ配信などが主な手法です。
特に、異なるハードウェア構成のPCに展開する場合は、Windowsのシステム準備ツール(Sysprep)の実行や、クローニングソフトのユニバーサルリストア機能などを活用し、ドライバの互換性やSID(セキュリティ識別子)の重複問題を解消することが不可欠です。
【STEP6】展開後の動作確認
イメージの展開が完了したら、各ターゲットPCが正常に動作するかどうかを詳細に確認します。具体的には、OSが問題なく起動するか、ネットワークに接続できるか、主要なアプリケーションが正しく動作するか、すべてのデバイスドライバが認識されているか、そしてWindowsやOffice製品のライセンス認証が適切に行われているかなどをチェックします。
必要に応じて、PC名やIPアドレスなど、個別の設定変更を行い、各PCが完全に利用可能な状態であることを確認してください。
【おすすめ】クローニングソフト以外のキッティング方法
PCの展開作業において、クローニングソフトは強力なツールですが、企業規模や運用方針によっては他のキッティング方法が適している場合もあります。ここでは、クローニングソフト以外の主なキッティング方法とその特徴を紹介します。
手動セットアップ
手動セットアップは、PC一台ずつOSのインストール、ドライバの適用、ソフトウェアの導入、各種設定などを人の手で行う方法です。
小規模なPC導入や、各PCに個別の特殊な設定が必要な場合に柔軟に対応できる点がメリットです。しかし、作業に時間がかかり、設定ミスやヒューマンエラーが発生しやすいというデメリットがあります。特に、数十台以上のPCを展開する際には、効率性や正確性の面で大きな課題となります。
Windows Autopilot
Windows Autopilotは、Microsoftが提供するクラウドベースのPC展開サービスです。デバイスをユーザーに直接配送し、ユーザー自身が初期設定を行うだけで、企業が事前に設定した環境を自動的に構築できる「ゼロタッチデプロイメント」を実現します。
IT部門はPCの箱を開けることなく、クラウド上でデバイスの登録とプロファイルの割り当てを行うだけで済み、キッティング作業の負担を大幅に削減できます。Microsoft IntuneなどのMDMツールと連携することで、セキュリティポリシーの適用やアプリケーションの配布も自動化されます。詳細は下記記事をご覧ください。
関連記事:Windows Autopilot(オートパイロット)とは?手順や費用、導入メリットなどを解説
MDM(モバイルデバイス管理)ツール
MDM(Mobile Device Management)ツールは、PCだけでなくスマートフォンやタブレットといった多様なデバイスを一元的に管理するためのソリューションです。デバイスの登録から設定、セキュリティポリシーの適用、アプリケーションの配布、さらには紛失時のリモートワイプまで、デバイスのライフサイクル全体を管理できます。
PCの初期キッティングにおいては、MDMツールを通じて標準的な設定や必要なアプリケーションを自動的に適用することが可能です。これにより、セキュリティを強化しつつ、展開後のデバイス管理も効率化できます。代表的なMDMツールには、Microsoft Intuneなどがあります。IntuneについてはMicrosoft LearnのMicrosoft Intuneとはをご参照ください。
プロのキッティングサービスの活用
MDM(Mobile Device Management)ツールは、PCだけでなくスマートフォンやタブレットといった多様なデバイスを一元的に管理するためのソリューションです。デバイスの登録から設定、セキュリティポリシーの適用、アプリケーションの配布、さらには紛失時のリモートワイプまで、デバイスのライフサイクル全体を管理できます。
PCの初期キッティングにおいては、MDMツールを通じて標準的な設定や必要なアプリケーションを自動的に適用することが可能です。これにより、セキュリティを強化しつつ、展開後のデバイス管理も効率化できます。代表的なMDMツールには、Microsoft Intuneなどがあります。IntuneについてはMicrosoft LearnのMicrosoft Intuneとはをご参照ください。
まとめ
本記事で解説したように、PCクローニングソフトは、キッティング作業の時間短縮、設定の標準化、IT管理コストの削減に非常に強力なツールです。
しかし、自社の環境に最適なソフトを選定し、異なるハードウェア構成にも対応できる完璧な「マスターイメージ」を作成・維持管理するには、高度な専門知識と膨大な工数がかかります。ライセンスやSID(セキュリティ識別子)の重複といった技術的な課題もクリアしなければなりません。
「ソフトを導入したが、かえって管理が煩雑になった」 「マスターイメージの更新まで手が回らない」 「大量展開をミスなく行うリソースがない」
そのようなPCキッティングとクローニングに関するお悩みは、東信システムサービスにぜひご相談ください。
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